「優しい国・カンボジア」
カンボジア 交久瀬 智子さん
−交久瀬 早希 隊員(H22-2次隊/小学校教諭)のお母様
青年海外協力隊員として旅だった娘に会える願ってもない視察の旅。出迎えてくれたカンボジアの風は、日本の初夏を思わせる爽やかさと常夏の花の香り漂うものでした。が、車中の私の目に飛び込んで来たのは、車とバイク、トゥクトゥク(バイクに荷台がついて人を乗せる)の多さ。鉄道が無いゆえの交通手段ですが、いつ衝突事故がおきても不思議でなく日本では見ない光景でした。日本大使館、JICA事務所、娘の勤務地の学校等日程通りに訪問先が消化されていきます。教員養成校視察前、娘がお世話になった先生から昼食の招待を受けました。骨付き鶏肉を何時間も煮込んだカレー等、テーブルに乗りきらない程のおもてなし料理に舌鼓を打ちながら、如何に娘が可愛がって貰っていたかを知り胸が熱くなりました。
世界遺産アンコールワットでは、日本語を流暢に話す現地の名ガイドさんの遺跡や壁画の説明に引き込まれ、13世紀のクメール王朝にタイプスリップ・・・時間の経つのも忘れました。又市場やマーケットの散策では、色とりどりの果物、野菜、生花を目の当たりにし、気候と風土によりこんなにも恵みがあるのだと、ただただ感嘆せずにはいられませんでした。器用に指先を動かし黙々と花を組み立てる花屋の女性の目が印象的でした。屋台や露店での立ち食い(!?) 等も旅ならではの楽しいひとときでした。最終日ホテルを後にする時の事、植え込みの木に大きな実が幾つもぶら下がっているのを見て、娘がホテルマンに「何の実?食べれるの?」と聞くと一人の男性が手足の汚れるのも気にせず、はにかみながら木に登り実を一つ一つ手で触り始めたのです。どうやら今食べ頃のがあるか見てくれていて、ホテル関係者でなくトゥクトゥクの男性でした。でもその自然な振る舞いに何だか私の心は温かくなりました。旅の始め「カンボジアの良い所を見てくれたらいいよ。」との娘の言葉を受けて、人や物や風景に触れていくにつれ、いつの間にか懐かしい思いでいっぱいになっていました。日本は何不自由なく暮らせる豊かな国だけれど、何処かに置き忘れている心の豊かさを今一度思い起こし、考えさせてくれる国・カンボジアでした。