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「視察の旅」は娘からのプレゼント |
ベナン 郡山 祐司さん
−郡山 彩 隊員(H26-4次隊/コミュニティ開発)のお父様 |
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娘の住むペネスルという村は、ベナン最大の都市コトヌーからバスに揺られて8時間の所にあります。娘の住む家は長屋の4軒屋。部屋は3つもあり、トイレや風呂場は屋内にあります(他の家族は共同のトイレと風呂場です)。窓の格子や鍵もとても丈夫で、JICAの手厚いセキュリティに感謝しました。
3泊しましたが、日本の日常とはかなり違います。井戸で地下から水を汲み、ろ過機を通し、煮沸して飲みます(現地の人は井戸水をそのまま飲むそうです)。トイレは汲み取りというシステムがなく、深く穴が掘ってあって、その中へ便をします。風呂は、ろ過した水を手桶で頭や体にかけて洗います。決して快適と言える生活ではありませんでしたが、娘と妻と3人だと、楽しくすごせました。
村を歩くと多くの人に「AYA〜!」(娘の名)と呼ばれ、「この二人がパパとママだよ」(パパ、ママは通じました)と紹介されると握手を求められ、ごつごつした手と握手しました。
ある家で、丁度ニワトリを裁いているところに出くわしました。娘はお願いして、ニワトリの足を包丁で切らせてもらいました(私には無理です)。娘はこの2年間の内にニワトリの裁き方を覚え、日本の子ども達に見せたいと言っていました。命から食肉の過程を目隠しして見せない、日本の食育に危機感を持っているのでしょう(私も大きく共感できます)。
確かに水道がなかったり、穴式のトイレは不便で不潔かもしれないけれど、村の人々が娘のことをかわいがってくれているのは肌で感じ、とても嬉しく思いました(残り1年4ヶ月やっていけそうな感じがしました)。
ベナンの生活を本やネットや娘からの情報で知っていたつもりですが、やはり「百聞は一見に如かず」です。自分の目で野放しのニワトリを見て、肌で灼熱を感じ、箸を使わず手で食事をして、壁のないトイレで用を足す。娘と一緒に生活しないとわからないことが数多くありました。
正直、私は1ヶ月だってペネスルの村で生活することはできないでしょう。でも、娘の表情はいつも明るく、村の人々や子ども達と楽しくコミュニケーションをとっていました。そして、私にはさっぱりわからないフランス語や現地語(アニ語)で通訳してくれたり、値段の交渉をしてくれたりした娘をとても心強く思えました。
仕事を長期休んで職場に迷惑をかけたり、食生活や気候を心配したりと参加に迷いもありましたが、行って良かったと本当に思います。
日本に帰ってきて、この旅は娘からの貴重なプレゼントだったんだと思えるようになりました。きっと、 娘が隊員になっていなかったら、アフリカなんて一生行くことはなかったでしょう。
最終日、空港で別れる時、「辛くなったら、いつでも帰っておいで!」と娘に言ったら、「絶対に帰らない!」と強く言い返されました。その言葉にたくましさを感じ、頼もしく思えました。
もし「視察の旅」の参加を迷われている方がいるなら、万難を振り払って参加することをお薦めします。ハワイ旅行では決して作れない、お子さんとの一生の思い出になるでしょうから。
追記) 帰国後、成田空港のトイレに入り、便座カバー、シャワーの出る便座、除菌スプレーを見て、とても違和感を覚えました。でも、そんなことすら忘れていくだろう自分を怖く思いました。
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